今月の法話(4月)

2017 年 4 月 1 日

201704_ozawa


「わたしたちを待っていて
 くださった阿弥陀様」
小澤憲雄(八王子組極楽寺)





 桜の盛りも終わりを迎え、いよいよ青葉が一斉に芽吹くよい季節になってまいりました。四月は入学、入社と新たな門出を迎える方も多いことかと存じます。それにちなんで、浄土宗のみ教えの始まり、阿弥陀様がお念仏のお誓いをお立てになったときのお話を皆さんにお伝えしようと存じます。

 これは本当にはるかな昔、お釈迦様がインドでお生まれになるよりもずっと前の話になります。お釈迦様の教えは永遠の真理ですので、お釈迦様がお生まれになる前であってもその真理は変わりません。ですからそのことわりをお悟りになった方は大昔からいらして、お釈迦様以前にも色々な仏様がいらしたのです。そのような仏様で世自在王(せじざいおう)仏という方がいらして、人々に教えを説いていらっしゃいました。そしてその聴衆の中に法蔵(ほうぞう)という比丘がいました。

 法蔵比丘はある国の王様でしたが、世自在王仏のご説法に心動かされ、全てをなげうって仏道修行に身を投じた方でした。あるとき法蔵比丘は意を決して世自在王仏の前に進み出てこう申し上げます。

「世自在王如来さま、あなたは威光に満ち比べるもののないお方です。わたしもあなたと同じような仏となりたい。そして一番素晴らしい仏の世界を作り、あらゆる人々を救いたいのです。そのためにはどんな苦難も厭いません」と。

 しかし人間である法蔵比丘は仏の世界など実際に見ることも叶いません。法蔵比丘の志に打たれた世自在王仏は仏の神通力であらゆる仏の世界を示され、その世界を実現する方法を事細かにお教えになったのです。

 世自在王仏から教えをいただいた法蔵比丘はそこから長い思案に暮れます。今まで見た仏の世界からよいところを選び出し理想の世界をどう作り上げたらよいか悩みました。さらに多くの人々にその世界に来てもらうにはどうすればよいのかも問題でした。なにしろ法蔵比丘も自分の力では仏の世界を見ることすらできなかったのです。わたしのような修行者でも到達できないのに、普通の人々がどうやってその国にやってくることができるのか。

 思案を続けて長い長い時間が流れ、この難題にとてつもない年月を費やしました。それして法蔵比丘の髪はどこまでもどこまでも長く伸びていきました。そして法蔵比丘はついに考えをまとめると、世自在王仏に会いに出かけます。世自在王仏もまた法蔵比丘が答えを出すのを長い間待っていました。

「さあ法蔵よ、お前が見出した理想と覚悟を語ってごらん」と世自在王仏は促します。

 法蔵比丘は世自在王仏の前で、自分が追求する仏の姿とそれを実現するための覚悟を48個の誓いとして語ります。自分が無限の光と無限の寿命をもつ仏となり、どんなに遠くの人、どんなに未来の人であってもその救いを届けること。あらゆる仏の世界から選び抜いた、光と安らぎに満ちた極楽浄土を自身の国土として作ること。そして人々がどこにいても一心に自分の名前を称えてくれれば必ず迎えに行くこと。

「世自在王如来さま、わたしは仏になれるでしょうか」。決意に満ちた目で法蔵比丘は世自在王仏に問いかけます。世自在王仏は「素晴らしい誓いだ。おまえは必ず成し遂げるだろう」と認めてくださったのです。

 法蔵比丘は倦むことなく修行を続け、阿弥陀様になりました。そしてはるか西の彼方、極楽浄土にお住まいになり、今もそしてこれからもお救いの手をわたしたちに差し伸べてくださいます。ですからわたしたちが悩み苦しみを抱えながらも南無阿弥陀仏と称えれば、そこには必ず阿弥陀様が寄り添ってくださるのです。

 四月は八日がお釈迦様のお誕生日の花祭り、また浄土宗の総大本山で御忌大会が開かれ法然上人のご恩に感謝申し上げる月でございます。お釈迦様、そして法然上人が伝えてくださったこのお念仏のみ教えとともに、皆さんには新たな一歩を踏み出していただきたいと存じます。

ページ上部に戻る