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今月の法話≪東京教区所属の僧侶による法話を連載いたします≫

平成23年6月「法爾・・・あるがままに」杉浦靖俊(八王子組大昌寺)

2011 年 6 月 1 日

sugiura

 

「法爾・・・あるがままに」

 杉浦靖俊(八王子組 大昌寺)

 

 
 
 3月11日の東日本大震災より早二ヶ月半、被災された方々の支援が遅々として進まない様子にいらだちを覚えます。また福島の原子力発電所の事故も政府や東京電力の発表とは違い、当初から一部で懸念されていた冷却水喪失によるメルトダウンであったことが判ってきました。3月15日には水素爆発が起き多量の放射性物質が福島県はもとより南東北から関東平野一円に飛散し、これからも汚染は続いていくようです。

 そんな騒然とした翌日の16日、法然上人800年遠忌にちなみ、上人の遺徳をたたえ宮内庁より『法爾』という八つ目の大師号を頂戴しました。本来なれば一宗を上げてお祝いをすべき慶事が一転、津波による被害の大きさが判明するとともにその悲惨さに心を痛め、放射能被曝への不安も相まってお祝い気分はかき消され、遠忌法要も順延することになってしまいました。

 さて、今回贈られた大師号『法爾』とは「あるがまま」若しくは「運命がそのように定まっている事」を表す言葉で、法然上人のお名前の由来でもある「自然(じねん)法(ほう)爾(に)」にちなむものです。比叡山の権力争いから逃れ黒谷の地に出離遁世した叡空上人から法爾自然として門下に入らんとこの地に赴いた若き上人に「法然房」という号と最初の師の源光と叡空からの一字を合わせ「源空」というお名前を授かったと伝えられています。

 法爾も自然も共に「法のおのずからしからしむる事」「本来あるがままの自然のすがた」を表す言葉です。善人は善人ながら、悪人は悪人ながら、あるがままに念仏を称えることこそ阿弥陀仏の救済に預かる唯一の道であると説かれた法然上人にふさわしい諡(おくりな)と思います。

 一刻も早く被災地域の復興が緒につき、原発の事故処理の方策にも目処が付いて、改めて遠忌にあたり法然上人の遺徳を偲び、晴れて大師号奉戴を心からお祝いできますことを願っています。

 ところで、先日参議院の委員会に参考人として出席した、専門家として長年にわたり反原発を唱えてきた京都大学原子炉実験所助教の小出裕章先生が、持論を述べた締めくくりにマハトマ・ガンジーの言葉を用いて、東電、国政、そして自身を含め原子力に関連してきた科学者を鮮やかに批判していました。それはガンジーの墓石に刻まれたもので、鳩山前首相も現職当時インドを訪問した折この言葉に感動して国会演説の中で引用していた記憶がありますが、今回の事故を踏まえた小出先生のものは重みが違います。

『7つの社会的罪』
1. 理念なき政治
2. 労働なき富
3. 良心なき快楽
4. 人格なき学識
5. 道徳なき商業
6. 人間性なき科学
7. 献身なき崇拝(信仰)

 最後の『献身なき崇拝(信仰)』とは色々な受け止め方があると思いますが、自己犠牲・自己否定、若しくは自己超越なしに真の信仰や宗教はありえないということなのでしょう。

 お念仏の教えに引き当てれば、凡夫の自覚のもとにありのままの姿で彌陀の名を称え、大いなる力に身をゆだねる中に必ずや救いがあるという法然上人の教えを思い起こさせてくれました。

 ガンジーの言葉にはこんなものもありましたね。
 『善きことは、カタツムリの速度で動く』

 体内被曝に注意は必要ですが、お念仏の中に焦らず希望を持ち、免疫力を高め、日々自身の与えられた務めに淡々と励んで行きましょう。

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