トップページ > 今月の法話
今月の法話≪東京教区所属の僧侶による法話を連載いたします≫

平成27年1月「聴ききる」清水道隆(豊島組心光寺)

2015 年 1 月 1 日

simizud_s



「聴ききる」

清水道隆(豊島組 心光寺)




 檀信徒から訃報をいただく。日程などが決まった後に必ずお願いすることがある。
「お戒名(法名)を付けるにあたり故人のお人柄をお聞きしたいので、お寺においでいただきたいのですが」
「おいでになれなければ最低A4一枚ファックスをいただければ、後は電話でお聞きします」

 こうお話をすると7割方の人が弔問や葬儀の打合せで忙しいだろうに来寺下さる。
例えばおじいちゃんが無くなると奥様や子供が来て話が始まる。
私はノートにペンを走らせながら
「ご主人はどこで生まれ育ったのですか?」
「お仕事は?」
「二人はどこで出会ったのですか?」
「お子さんは何人?」
「お孫さんは何人?」
「お名前は」と話を進めます。
そして「お人柄は?」と切り出してゆきます。

 最初から「お人柄を聞かせて下さい?」と始めると
「厳しい」「自己中心的」「優しい」などと抽象的な言葉しか出てこない。
先に答えやすい話題を持ってきてあげると話が広がりやすくなる。
「家に帰っても仕事をしていた」
「部下から慕われていて」
「でも部下に言わせると仕事には厳しい人だった」と仕事一筋、厳しい人が具体的に見えてくる。
そして家族にとってこの厳しい人が頼りがいのある、尊敬できる人となってゆく。
 この後、趣味や好きな言葉などざっくばらんにお聞きして約1時間で終了する。

 話を終えた遺族は充実感を漂わせながら帰ってゆく。後姿を見送りながら疲れ切っている自分に気が付く。聞くことはエネルギーのいる仕事だ。
 しばらくしてノートを見ると色々な言葉が躍っている。そこに漢字を一つ一つ置いてゆく、漢字一文字にできない言葉もある、熟語で置いていく、他の言葉におきかえていく。
 この作業を経て戒名(法名)が決まるわけだが、読んでみて語呂の悪いものも、見た目のすっきりしないものも出来てしまう、しかし遺族に説明をしたときに納得できる戒名(法名)が一番であると私は思っている。

来年11月に五重相伝会を自坊にて開筵する。
入行者1人1人にお願いすることがある。譽号、戒名を授けるための「面談」だ。
一応30分と言ってあるが、30分で終わることはない。前回は平均75分であった。
自分の人生というものは、他人の人生のように客観的には話せない。どうしても話が長くなる。
そしてだいたい「あらやだ、どうして住職にこんなことまで話しちゃったんだろう」という言葉で終わる。
この言葉が大切だと思う。

皆には言えないこと、お墓まで持っていこうとしていたお話まで聴ききる。聴ききれて得た信頼は揺るぎないものとして残るのではないだろうか。合掌

ページ上部に戻る