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今月の法話≪東京教区所属の僧侶による法話を連載いたします≫

平成30年7月「“そのとき” に備えていますか?」内田義之(江東組靈山寺)

2018 年 7 月 1 日

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 皆さまは、常日頃から災害に対する備えはありますか?
 私ごとですが、今年の一月に防災士という資格を取得しました。防災士とは、日本防災士機構が認証した民間資格ですので特別な権限はありませんが、日頃から地域の防災について考え、地域の防災力を高めるリーダーとしての役割を担うという位置づけです。

 その講習会では、ワークショップなどの実践的活動と防災知識に関する講義があり、久しぶりに机に向かって、テスト勉強をしました。学生時代から長~いブランクがありましたので、なかなか難儀いたしました。今回は防災士として、浄土宗僧侶として、“そのとき”の備えについてお話しさせて頂きます。

 まず、防災の基本柱は三つ。 ①「自助」 ②「共助」 ③「公助」 があります。一つめの「自助」とは、自分の命は自分で守る、ということ。二つめの「共助」は、共に助け合う。三つめの「公助」は、国や自治体の公の助け、救援物資や支援ということです。
 この防災士講習のなかで、ある講師の方がおっしゃいました。「公助の先は無いから、とにかく後悔しないように万全な備えをしなさい、防災の基本は自助です。普段の備えこそが一番大切です、普段の備えがあってこそ日々の生活を安心して心穏やかに過ごせるのです」と。私はその言葉を受けて、改めて考えさせられました。

 『天災は忘れた頃にやってくる』、皆さんも聞いたことがあるとおもいますが、明治の文豪家、寺田寅彦氏の残した有名な警句です。しかしながらここ数年、温暖化の影響もあってか、忘れる間もなく次々と自然災害が発生しているように感じます。東日本大震災、鬼怒川の氾濫、最近では大分県の土砂災害など規模の大小にかかわらず多くの災害が日本を襲っています。
 では、もっと昔の時代に目を向けてみるとどうでしょうか?例えば浄土宗宗祖、法然上人の時代です。戦乱や飢饉、貧困、自然災害、疫病。たくさんの人々の命が奪われてしまう災いがすぐそこ日常にあったのです。そこで、法然上人は「南無阿弥陀佛」と称えれば、どんな方でも必ず等しく救われる、「南無阿弥陀佛」のみ教え、浄土宗をお開きになったのです。

 今も昔も、時代がいくら変化しようとも、“そのとき”というのは、私たちの普段の暮らしの影に息を潜めてジッとしているのです。「公助の先は無い・・・・」という防災講師の先生の言葉に対して、私は思いました。「私たちには法然上人のお念仏のみ教えがあるじゃないか」と。
 私たち浄土宗の信者は、法然上人のお念仏のみ教え「南無阿弥陀佛」を心のより処としております。お念仏をお称えすれば、どんな人でも極楽浄土の阿弥陀さまが、必ず極楽浄土に救いとってくださいます、決して見捨てたり見落としたりはいたしません。私たちには「公助」の先に阿弥陀さまの救済がございます。念仏による阿弥陀さまからの救いの手ですから、まさに「救助」ですね。
 防災には普段の備え、「自助」が一番大切です。同じように阿弥陀さまの救い、「救助」を得るには普段からの備えが必要です。この備えこそ「南無阿弥陀佛」のお念仏に他なりません。お念仏の備えですので、「念助」とでもいうのでしょうか。。。

“そのとき”というのは、忘れた頃にやってきます。東日本大震災後、災害に対する意識が高まりました。防災グッズも世の中に数多く出回っています。
 そこで、防災士の私から、皆さまに準備して頂きたいことがあります。日本のどこで災害が起こっても遅くとも三日で救援物資(公助)がゆき届くそうです。最低でも物資が届くまでの三日間分の備蓄(自助)をして下さい。基本は食糧、飲料水、衣類などです。赤ちゃんがいるご家庭は、粉ミルクや紙おむつ、保存の効く離乳食など。ご高齢の方は、普段から服用しているお薬など。それぞれの生活習慣にあったものを非常持出し袋に入れておきましょう。また「共助」として、日頃から近所の方とのコミュニケーションも大切です。

 そして、最後に浄土宗僧侶の私から、皆さまに準備して頂きたいことがあります。極楽浄土に往生(救助)する為の日頃からの備え、お念仏(念助)です。普段からお称えしてこそ、念助となります。お念仏(念助)の中にこそ、自助も、共助も、公助もあり、そしてその先の救済もあるのです。
 それでも私を含め、自信を持って備えているよ!と言える方は少ないのではないでしょうか。簡単だからつい忘れがちになってしまいますが、お念仏をお称えするのに道具はいりません、時間も場所もどこでも構いません、どうぞ皆さま方、日々の生活を安心して心穏やかに暮らす為に、そして寿命が尽きた“そのとき”に、慌てないですむように、共々に生涯に渡って日々のお念仏をお称えしていきましょう。

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