平成26年11月21日(金)に、当年度第2回目の研修会を開催いたしました。今回の研修会にはお二人の講師をお招き致しご講義をして頂きました。
はじめに、長野教区西光寺の寺庭婦人であられます竹澤環江先生に「絵解き「六道地獄絵」」というお題でお話し頂きました。竹澤先生は6幅の掛け軸をもって丁寧に絵解きをしてくださいました。掛け軸には、閻魔大王を中心に地獄の責め苦を受ける人々と獄卒の生々しい姿が描かれ、それらを指し示しながら流暢な語り口で進められる絵解きは、見る者を瞬く間にその世界の中へと吸い込んでいくようでした。絵図の最後には、お念仏の功徳によって極楽浄土へ迎えられていく様子が描かれております。どのような地獄絵においても、最後には阿弥陀様が現れ、衆生をお救いくださる様子が描かれているのだそうです。とはいえ、このような地獄には堕ちたくない、そのために日々善行を修して過ごさなければならない、そういった心を育てることが地獄絵の意図であることを解説くださいました。字が読めない人々が多かった頃の貴重な説教としての絵解きに対し改めて注目し、仏教への導入教材としてはもちろん、子供達に対する情操教育の一環としての新たなる価値を力説されておられました。
つぎにご講義くださいましたのは長野教区正満寺の和田典善先生で、「地獄の解き方~往生要集より~」と題してお話し頂きました。先生は主に以下のような点を中心にお話しくださいました。
- 竹澤先生もおっしゃっておられたが、地獄に関する物語は昨今たいへん注目されており、2012年には地獄の絵本が累計11万部も販売されるに至った。これはしつけとして地獄の絵本に高い評価が下されたことによる。
- 地獄の描写は書記教典から徐々に整備・増広され、内容的に豊富になっていったものと考えられる。また、十王思想についてはかなり時代が下ってから説かれるようになったものであり『十王経』にみることができる。
- 『往生要集』に解かれている地獄の様子は『正法念処経』を基にしたものであるが、必ずしもすべてを引用したわけではなく、源信によって選び取られている。
- 源信は当時の叡山の堕落した状況を鑑み、戒めの思いもあって地獄をといたと思われる。また、西方極楽浄土が四方立相の世界であるならば、地獄を含む六道もまた有相の世界であるという考えもあったのではないか。
- 人は何を恐れ、何を求めて、この地獄・極楽を語り継いできたか今一度考える必要性があるのではないか。地獄の様相はその残忍さばかりが目立つが、地獄へ堕ちる要件は、他でもない前世において人間が犯している罪の報いであると言うことをわすれてはならない。
以上のように、地獄という問題に改めて注目し、その重要性について改めて理解を深める上で非常に参考となるお話しの数々に、参加された方々も熱心に耳を傾けておられました。