浄土宗東京教区教化団

平成23年3月「報恩感謝~さまざまな出会い~」田丸英春(北部組正安寺)

tamaru

 

「報恩感謝~さまざまな出会い~」

 田丸英春(北部組 正安寺)
 


 
 ある霊園にお彼岸のご回向にうかがった時の話です。その霊園は大通りから入口まで一本道しかなく、大渋滞を起こしていました。私も巻き込まれてしまい、約束の時間には確実に遅刻をしそうでした。その一本道は片側が川、片側が住宅地になっていました。川に飛び込むわけにはいきませんので、イチかバチか住宅地に入っていったところ、これがみごとに袋小路にはまってしまいました。車外に出て、あたりを見回し、どうしようかと途方にくれていたら、その住宅地の住民の方が出てきて、「どうしたの」と聞かれました。私が事情を説明したところ、「それなら、ここへ車を停めていきなよ」と駐車スペースを提供してくださったのです。私は涙が出るほど有り難かったです。
 そのとき私が思ったのは、世の中支え合っているのだな、人間一人ではどうしようもないのだなと感じました。「困ったときはお互い様」と言いますが、「お互い様」というのは存在するのだなとも思いました。
 私たちは毎日なんとなく一日を過ごしているようですが、「お互い様」「おかげ様」に支えられています。それに気づくのは、なかなか難しいのです。
 私たちは今生きているのが「あたりまえ」のような気がしますが、ある日あるとき急に生まれてきたわけではありません。先祖代々連綿と受け継がれてきた命のリレーによってこの世に生まれてくることができました。そして、支え合って生かされております。
 さらに私たちは「縁」あって、この世でお念仏に出会うことができました。これは「たまたま」ではなく、「縁」によってなのです。
 阿弥陀様は、お釈迦様がお経の中で説かれた仏様です。この世には修行ができる人も、できない人もいる。すべての人が平等に救われるためには、阿弥陀様のお力にすがるしかないということを示して下さっています。私たちは、お釈迦様のそのお示しにより、阿弥陀様の本願に出会うことができました。「念仏を称えるすべての者を迎え摂り、極楽浄土へ往生させよう」と阿弥陀様みずから誓っておられます。
 この世で支え合っている「お互い様」「おかげ様」に感謝、お念仏に出会えた「ご縁」に感謝しつつ、お念仏を称え続けましょう。