浄土宗東京教区教化団

平成24年8月「生々流転-浄土への細く白い道-」松永聖弘 (玉川組称往院)

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「生々流転
    -浄土への細く白い道-」



 松永聖弘 (玉川組称往院)

 皆様こんにちは。月遅れのお盆が8月13日から15日(または16日)にかけて行われます。

「迎え火や 父の面影 母の顔」

  (浄土宗月訓カレンダー・平成24年8月号より)

 お盆には迎え火を焚いてご先祖をお迎えして、ご先祖や父母から受けたご恩を思い出して、共々に感謝の心を伝えましょう。

 昨年の東日本大震災で亡くなられた方々、行方不明になられ、現在に及んでいる方々、さらに、台風や竜巻等の自然災害で亡くなられた方々の御霊に哀悼の意を捧げたいと思います。
 ところで、今年の干支は辰年です。辰年を紐解くと、次のようなことが思い出されます。幕藩体制が崩壊し、戊辰戦争は辰年、その後明治時代(1868)になりました。第二次世界大戦(太平洋戦争)でわが国が敗戦して、講和条約を調印する。そして国際社会に民主主義国家と認められたのは、昭和27年(1952)の辰年です。その12年後、昭和39年(1964)高度経済成長を遂げつつ、高速道路、東京タワー、新幹線の開業、そして東京オリンピックを開催したのも辰年です。さらに、スカイツリーの開業も今年(2014)、辰年です。

 明治政府は欧米の帝国主義に富国強兵策を推し進めて、近代国家の仲間入りをしました。そして昭和20年に敗戦。今から60年前、講和条約を締結し、民主主義国家として、昭和27(1952)年に日本が世界の国々に仲間入りをした年です。今年は歴史の転換点を感じます。

 このように考えると、昨年の3.11以後、これまでの日本人の生き方には何か大きな変化が生じているのではないでしょうか。「定まることのない自然災害と恐怖」「人間の絆」「へこたれない勇気」「未来への希望」「放射能汚染の恐怖」等々。どうすることも出来ない不安感の中で、それを乗り越えていく勇気と希望を胸に刻みながら、涙を流して、また流す余裕もなく、人々は生きていかなければなりません。救いの教えが求められているのが、現在の世相ではないでしょうか。

 浄土宗では二河白道の教えがあります。この此岸(現実的世界)から彼岸(宗教的世界)につづく細く白い道があります。西方の極楽浄土に向かって西へ旅人が歩んでいると、左右に河があるところまで辿り着きました。西方に向かう南側は火の逆巻く河で、北側は水がしぶきをあげている河です。その河の真ん中には、幅4〜5寸(約18センチ)の細く白い浄土への道が西方に通じています。火と水が交互に白道にかぶさり、旅人が進んで行くことをさえぎっています。しかし、行くべきか、退くべきか思い悩んだ末に、進むことを決心しました。それは後方から群賊・悪獣が現れ襲ってくるから、ここで死ぬよりは、旅人は迫り来る死の恐怖の中で、白道を選んだのです。前方から「まっすぐに歩んできなさい」と阿弥陀さまの声がしたのです。その声を信じて向こうの岸に渡ることができました。彼岸は安心の宗教的な浄土の世界です。

 此の岸である現実的な世界(娑婆世界)から彼岸(極楽浄土)への歩み方はどのようにすればいいのでしょうか。火は人間の無知からくる怒りの炎をあらわし、水は人間の欲望をあらわしています。細く白い道は浄土への道です。それは阿弥陀様が私たちに手をさしのべてくださる道です。阿弥陀仏の御名(みな)をおとなえして歩むのです。『南無阿弥陀仏』と声に出して一切の自己のはからいを捨てて阿弥陀仏の名号をおとなえすることなのです。

 あるがままの自己自身は至らぬ人間である。自己への反省をしていかなければならない自分自身が、仏の名号をおとなえすることにより、宗教的な世界へ生き、生かされて、よろこびに生きることができるのです。

 最後に皆様ご一緒に手と手を合わせて合掌してください。左手は阿弥陀様、右手は自分であると思って同称十念いたしましょう。
 同称十念   『南無阿弥陀仏』・・・。