浄土宗東京教区教化団

平成25年6月「共に生きよう」大蔵健司(八王子組不断院)

okura



 「共に生きよう」

 大蔵健司(八王子組 不断院)




 「一人籠もり居て申されずば、同行と共行して申すべし。共行してもうされずば一人籠もり居て申すべし。」

 6月に入り木々の緑も深くなり、梅雨の便りも聞こえる季節になってまいりました。東京には浄土宗寺院が400ヶ寺以上ありますが、私が住職をしている八王子市には58万人の人口に対して浄土宗の寺院は7ヶ寺しかありません。その八王子市を含めて、日野市、町田市、多摩市、武蔵村山市、青梅市、の地域には合計15ヶ寺の寺院しかありません。
 浄土宗の行政区画では「組」と呼ばれる最小の区画で、この所属する区画を「八王子組」と呼んでいます。お寺同士の交流や連絡は勿論あるのですがなにしろ面積が広く、私が住職をする寺から八王子の中心部である八王子駅までは車でも30分程かかります。また隣の町田市のお寺に行こうと思ったら1時間以上の時間がかかってしまいます。

 浄土宗のお寺では年間を通して様々な法要がありますが、特に大きな法要(行事)に「施餓鬼会」(せがきえ)と言う行事があります。この法要は浄土宗のお寺でも7割以上のお寺で行われている法要ですので参加された方も多いかも知れません。通常お寺の法要は春・秋のお彼岸や夏のお盆など時期が決まっているものが多いのですが、お施餓鬼法要は本来一年中何時おこなってもよい法要です。
 実際に大阪にある「一心寺」さんでは「常施餓鬼」といって一年中施餓鬼法要を行っています。しかしながら東京近郊では春から夏にかけて行われる事が多い行事です。私の所属する「八王子組」のお寺でも「施餓鬼会」を行うのは5月から始まって6月7月8月と四か月にわたります。お寺も広い地域に散らばっていますし、駐車場の数も限られていますので比較的近くの御住職と車を乗り合わせてお互いのお寺にお手伝いに伺います。5月あたりはまだ気候が良く爽やかですがこれから梅雨があけて夏本番となってくると、法要が終わると汗がにじんできます、お盆やお施餓鬼のシーズンになって夏になって来たなと思う季節の行事です。

 最近では通常の御法事の人数も少子高齢化のせいか参加人数が少なくなってきましたが、お寺の「施餓鬼会」は沢山の檀信徒の皆様がお参りになられます。お寺によっては本堂に人が入りきれないので外にテントをはって対応しているお寺もあります。日頃は自宅のお仏壇の前で1人きりで手を合わせてお念仏されている方々もこの日は大勢の人たちと一緒になって餓鬼に施しを与え、そうして一緒に手を合わせてお念仏をお称えします。

 冒頭に書きましたのは法然上人の御言葉で「ひとりこもって称えることができなければ、仲間と共に称えなさい。〔仲間と〕共に称えることが出来なければ、ひとりこもってとなえなさい。」(現代語訳)という御言葉で「この世の過ごし方は、念仏を称えやすいようにしてすごすべき」(現代語訳)という御言葉のなかに出てくる一文です。これは念仏を申す人は、日頃から念仏を第一に考えて、念仏のしやすい環境で生活していきましょうということです。南無阿弥陀佛のお念仏は、誰か他人の為ではなく自分自身の為に阿弥陀様にお願いするお念仏です、ですから自分一人で称えればそれで充分ですが、やはり多くの方々と一緒にお称えできるのは自分一人ではないみんなと一緒に共に生きているのだと励みになります。
 年に一度でも自分と縁のある菩提寺で年齢も性別も立場もちがう人々と一緒にお念仏を称える機会が持てるのは本当に有り難い事です。特に浄土宗では「同称十念」といってご一緒に十遍のお念仏をお称えする御作法がございます。大勢の皆様と声を合わせてお念仏できる素晴らし御作法です。何も難しい事はなく皆さんと共にお念仏生活に生きる事はできるのです。

 今年もあと3ヶ月間普段自分の寺の檀信徒と一緒にお念仏させていだいておりますが私も多摩地区のあちらこちらのお寺さんにお邪魔してそこの檀信徒の皆様と一緒にお念仏をお称えさせて頂きます。