浄土宗東京教区教化団

平成25年12月「新年を迎える準備」小林惇道(芝組妙定院)

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  「新年を迎える準備」

  小林惇道(芝組 妙定院)
 




 年の瀬が迫ってきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。様々なことを振り返るころかと思います。寒さも日に日に増して空気は澄み、東京からも富士山がとても綺麗に見える季節です。町にはいたるところで木々や街並みがライトアップされ、クリスマスツリーを多くのところで目にします。

 クリスマスはイエス・キリストの誕生日ですが、12月25日その日、総本山知恩院では年一回の「お身拭い式」があります。「お身拭い」とはすす払い、知恩院の御影堂に祀られている法然上人のお像に一年間に溜まったすすやほこりを落としきれいにするという式です。

 最近、「12月13日は大掃除の日」との標語を見つけました。実際に日本記念日協会には、12月13日が「大掃除の日」として登録されています。これはその日が古くから「正月事始め」の日とされ、一年を締めくくり新年の準備を始める日であり、江戸時代に江戸城で「すす払いの日」として決められていたことにちなみます。大掃除は現在ではきれいにすることで「新年を気持ちよく迎える」という意味が多いですが、「すす払い」とは、もともと単に掃除をするという意味よりも、仏壇や神棚をきれいにし、仏さまに感謝をしたり年神さまをお迎えする準備をするために行われていた行事で、信仰の一種として始まったものです。

 仏教では「一掃除、二勤行、三学問」といわれるほど、掃除を大切にします。これはお釈迦さまとその弟子パンタカとの説話からきているといわれています。お釈迦さまは物覚えの悪かったパンタカに次の言葉を唱えて掃除をするように言いました。
「ちりを払い、あかを除かん」
 パンタカは、来る日も来る日もこの言葉を唱え一生懸命掃除をしました。そしてついにこの言葉の意味を理解したのです。人の世の迷いがちりやあかで、それを掃きとることだと、つまりは心の迷いや煩悩を取り払うことがとても大切だということです。

 皆さまは大掃除をするとどんな気持ちになるでしょうか。部屋やそこにあるものがきれいになると気持ちの良い気分になりますね。そして一年間使ったものに対して感謝の気持ちが芽生えてくるのではないでしょうか。さらに大掃除をすると普段気づかないことに気づいたりします。痛んだり壊れたりしている箇所を見つけたり、見つからなくなっていたものを発見したり、きれいになることで本来の形や色を再認識したりします。大掃除は、ただきれいにするというだけではなく、当たり前だと思っていることを改めて意識するきっかけになります。諸行無常で変化の激しい世の中にあって一年の締めくくりには、この一年間無事に過ごせたことに感謝する時としたいものです。

 皆さまのお宅で大掃除をされる際、是非ともお仏壇の掃除をなさってください。仏さまやご先祖の方々の位牌、またロウソクや線香を立てる灰を掃除することは非常に大切です。お仏壇はお宅の中心であり皆さまの心の拠り所です。きれいなお仏壇は仏さまやご先祖も嬉しいでしょうし、そこで唱えるお念仏は大変有り難いことです。

 大掃除をすることは、煩悩を取り除き、周りのものに感謝し、普段気が付かないことを再認識することに自然と繋がっていくものです。今この時のわたしたちがあるのは阿弥陀さまやご先祖の方々、周りの多くの方々のお陰です。新年を迎えるにあたって感謝をしながら迎えること、これほど素晴らしいことはないでしょう。