浄土宗東京教区教化団

平成26年3月「春のお彼岸」一瀬哲雄(北部組瑞泉寺) 

ichinose

   「春のお彼岸」


   一瀬哲雄
   (北部組 瑞泉寺) 



 早くも3月になりました。
 2月は冬季オリンピックが開催され、日本人の活躍が報道され、いろいろな感動のドラマがありました。それから都心でも二度記録的な大雪が降りました。積もった雪はどうされましたか?お寺は雪が積もると大変です。寺の周りの道路や参道を歩いていて滑り大ケガをしないようにと家族総出で雪かきをします。そのような中、お檀家さんがお手伝いに来てくださり大変助かりました。この労働も寺への布施行だと思います。

 さて、3月は春のお彼岸がまいります。彼岸ということは、彼の岸、理想の世界、つまり極楽ということです。それに対して煩悩にまみれた心で感じている世界を、此の岸、娑婆、無常の世界と言います。
 日本独自の行事としてのお彼岸は、春分の日でもある中日の前後3日間の1週間です。今年は3月18日から24日にあたりますが、お彼岸は次の実践をし、極楽浄土へ生まれ変わりたいと願う信仰実践の期間です。その実践とは難しい言葉ですが六波羅蜜(ろくはらみつ)と言います。

① 布施(ふせ)    ─ 物質的、精神的に施す。
② 持戒(じかい)   ─ 規律を守ること。
③ 忍辱(にんにく)  ─ 耐え忍ぶこと。
④ 精進(しょうじん)  ─ 努力すること。
⑤ 禅定(ぜんじょう) ─ 落ちついて集中すること。
⑥ 智慧(ちえ)     ─ 正しい判断をすること。

 そんなこと出来ないと感じられる方もいらっしゃることでしょう。しかしお墓参りも六波羅蜜の実践でもあると言われています。花や水や線香や食べ物や燈明などを供えることから始めてみてください。

 お彼岸の中日である春分の日は「自然をたたえ生物をいつくしむ日」と定めています。「暑さ寒さも彼岸まで」と言いますが、春の彼岸になると気候が良くなり木の芽も出て花も咲き、気分も明るくなります。私の寺の境内では、福寿草が厳しい寒さに負けず、硬い土を割って顔を出し黄色い花を咲かせます。今年は雪に埋もれる期間が長かったので不安でしたが、無事に咲き始めてくれました。

 そしてまた、昨年5月の浄土宗主催『宮城・岩手慰霊法要の旅』に参加した際には、未だ復興されていない石巻市のお寺で見渡す限り倒壊したお墓の中、ほんの狭い空間に一輪の小さな野の花が赤く鮮やかな色をして咲いていました。津波などで亡くなられた方々の鎮魂の花だと思い、お念仏を唱えました。

 あらゆる自然の生命が若々しく萌えあがる春彼岸の時期、今日ある自分を育んでくれた数多くのご先祖さまに感謝の誠をささげ、そしてご先祖さまからいただいたかけがえのないこの命を悔いなく生きることを墓前に誓いましょう。その時、お墓参りだけではなく本堂にあがり、ご本尊さまにもお参りしお念仏を唱えることをおすすめいたします。